脳科学・遺伝学に基づく「催眠療法」
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うつ病(大うつ病、気分障害)

 DSM-5 以前は、大うつ病(major depression)と表現されていたうつ病ですが、翻訳にあたって「major」を「大(だい)」と訳して、重症であるかのような誤解されやすい表記になっていました。このmajor という英単語は、「主要な、多数の」といった意味で、「臨床上よく見かける」といった意味合いです。


 うつ病とは、興味や喜びの喪失で、悲しみまたは空虚感などを感じた生活が2~3週間以上続く精神状態です。食欲も意欲も失い、不眠となり、自殺念慮に陥ることもあります。中には、過食や過眠状態で日々を過ごす人もいます。

 うつ病は、個別性・多様性が極めて高い病気といえます。それゆえに、個々の異なる特徴を把握して改善に取り組む必要があります。

原因は現在の環境だけでなく、幼少期の親子関係におけるトラウマなども関連している場合が多いのです。

 うつ病と呼ばれる「心の病」は、満たされない精神状態の持続によって脳が機能不全に陥った状態です。きっかけは、発症当時の環境による精神的ストレスが引き金となりますが、その背後には、幼いころからの満たされない精神的葛藤や苦痛(トラウマ)などと生まれ持った気質が絡んでいます。

「心の病」において、個人の性格傾向は大きく影響し、精神的なストレスに対する反応には個人差があります。

 うつ病に陥ると、前頭前皮質や帯状回(前帯状皮質)、大脳基底核における脳の活動が低下していきます。また、海馬や扁桃体の体積も減少していくことが報告されています。その他、セロトニンやヒスタミンの神経伝達機能の低下も明らかになっています。

 この後も、脳部位の名称が出てきますが、読み流すか、第5章のP.312、313 の図をご参照ください。

 日常生活で積み重なった不満などで悩んでいるとだんだんと抑うつ状態に陥ります。そして不眠症になることも多いのですが、そうなるとますます悩みは深刻化して症状も悪化してきます。なぜなら、眠れないことで脳機能の混乱が回復できないからです。

 したがって、様々な精神疾患・神経変性疾患(うつ病、不安障害、強迫性障害、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病など)は睡眠障害が合併しているのです。

 精神的に抑うつ状態にいたると、脳内では過剰にセロトニンという脳内神経伝達物質が消費されます。

 このセロトニンと眠りとの関係は深く、第5章で詳しく触れますが、気分が抑うつ状態にいたった時は、セロトニンの補給が必要になります。

 セロトニンは、トリプトファンというアミノ酸から脳内で作られますが、そうした生合成には様々な栄養素が必要になります。
 例えば、ビタミンB6によってトリプトファンがセロトニンに変化しますが、その過程で酵素と呼ばれるタンパク質が必要で、その酵素を働かせるために、様々なビタミンやミネラルが必要になります。

 そうした総合的な栄養素によってセロトニンが生成され、心を守っているわけですが、抑うつ状態にいたれば、誰もが食欲がなくなり、栄養の供給が不足してしまうことが多いのです。

 また体内でもセロトニンは作られますが、脳内以外で生成されたセロトニンが血液中に存在していても、脳の血管にある血液脳関門という関所によって、脳内へと取り込まれることはありません。

 それゆえに、食欲のない状態では血液中の栄養素は減少して、脳とそれ以外での組織で取り合いのようになっていますので、脳内での栄養が不足してしまいます。心を正常に保つためには、さらに多くのバランスのとれた十分な栄養が必要となるのです。

 私たちは、ストレス環境下において、脳機能を正常に保ち、活力を維持するためには、十分な栄養と睡眠が必要なのです。

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