HOME > 自己催眠術Ⅱ


 人は太古の昔から祈るという心を持っています。祈りを通して生き抜いてきています。神や自然に豊穣や健康、幸せを祈って生活してきました。豊かで幸せなときは、より豊かさを願い、耐えているときは、心の中の苦しみを訴えるように祈って乗り越えてきています。このような祈りは、背後に信じる気持なくしては成立しないことについては、分かると思います。古来から、人々は何かを信じ、それに枚いを求め、祈ることで、環境をより向上させたり、苦しみに耐え抜く力を得て、救われるという奇跡を多かれ少なかれ体験してきていると思います。このように人が信じ祈るとき、人の無意識は、意識するしないにかかわらず、しっかりとその人を支えてきたと考えています。

 人は、神であれ、仏であれ、何かを信じる心があれば、それに祈ることでいかに心が楽になるかということを経験から知っています。

 潜在意識(無意識)に願望を送り込めば、どんな願いも叶うということを本で読んだとき、そういうことはあり得ないと否定的な人は、日常生活の中で常にマイナス思考をしている傾向があります。マイナス思考で生きていれば、たまに白分の願いが叶ったときでも、それを単なる偶然としてしか処理できませんので、その幸運をさらに活かすことができないのです。プラス思考の人は、その幸運をさらに発展させ、より多くの幸運へと繋いでいけるのです。そのような人は心にプラスのエネルギーが充満しています。

 人は、心にマイナスのエネルギーとプラスのエネルギーを同時に持つことはできません。心が弾んでいるとき、喜びや満足に満たされているときに、同時に人を恨んだり、悲しみに心を塞ぐことはできないでしょう。心の中で、喜びと悲しみを同時に共有することはできないのです。光と闇の世界を同時に心の中に保つことは決してできません。だから、心をプラスの感情に保っていれば、どんどんとプラスのエネルギーが引き寄せられてくるものなのです。マイナスの感情など近寄る隙問を与えません。したがって、人は心をプラスの状態にしてさえいれば、より満たされた状態になっていくのです。苦しみなどその人の人生に存在しなくなっていきます。自分の意志で、こうありたい、こうなりたいと思うことが実現できるようになっていきます。プラス思考とはそのようなもので、意識して闇を光の世界に変えていくことで、その人の人生が大きく開けるのです。

 しかしながら、世の中は自分の思い通りにならないことや、嫌なこと、辛いことで充満しています。人間関係を含めたそういう環境の中で、いかにプラス思考を維持するかが問題になります。どうしてもうまくプラス思考を維持できない事態に至った場合、自分の中のトラウマに目を向ける必要があります。トラウマがかかわっていると、そう簡単に白分で感情をコントロールできないからです。トラウマを解消するには専門家に相談するのが手っ取り早い方法です。金がかかっても、一人でもがいている時間のほうがもったいないと思って下さい。素人では、そう簡単にどのようなトラウマが、どのように心や感情にかかわっているかということを、認識することや、取り除くことはできないのです。それよりも、早くトラウマから自分を解放させて、有意義な人生を送ることです。時間というものを大切にし、価値ある人生の課題や使命に混乱することなく取り組むことです。トラウマの影響で、心がマイナス思考になっていると、どうしても気持ちが消極的になり、行動に勢いがなくなってきます。できることも、できなくなってくるものです。決して、マイナス思考により、心を消極的、否定的にしてはいけません。自分の心は自分で舵を取っていかなければいけないのです。自分に全ての貴任があることを白覚してください。

 私の所に催眠療法を受けに来られる方の中で、今までに自律訓練法を含む自己催眠を学び、願望実現や長年悩んできた症状からの自己解放に悪戦苦闘したが、何の役にも立たなかったと訴えられる方も多くおられます。その方々の無意識の中に、強いトラウマが存在していて、それによって影響を受けている場合は、無意識の中でうごめいているトラウマを取り除かない限り、自己催眠の暗示だけでは、なんでも願いが叶うこと、症状を消し去ることはできません。もし効果を出せたとしたら、無意識の中に影響力を与える強いトラウマが、存在しなかったといえます。

 ただ単に人前で緊張する、あがる、赤面するという悩みの場合でさえも、人によって様々なトラウマが背後に存在します。このトラウマを意識の世界で正しく把握し、取り除かなければ、自己催眠の暗示だけではその場しのぎどころか、たいした効果は望めません。

いや、もっとはっきり言うと、全く効果が出せません。なぜならその人をそうさせている原因を無視、または無意識の中に置き去りにしては、人は向上することはできないのです。

 人前であがるということにおいても、何度も何度も今度こそと周到な準備をして望んではみるものの、かえって結果が悪いと悩まれている方がいかに多いことか。本来ならば、場数を踏んで慣れていくことで、うまくなっていくものなのに、そうできない力がどこで働いているのかを見極めることです。

 もう一度言います。人前での緊張やあがりで悩んでいる人で、自己催眠の暗示を試みたが、うまくいかないという人は、その人をそうさせているトラウマによる力が働いています。その場合は暗示だけでは改善できません。また、トラウマ以外の問題点もあります。

それは、過去に、あがってうまくいかなかった経験があると、そのときのことが頭に浮かんできて、そのイメージを打ち消すように。「あがらない、あがらない……」と呪文のように唱えている人を多く見受けます。しかし、そういうことは自己暗示として役に立たないばかりか、逆に状況を悪くしていきます。なぜなら、言葉で唱える暗示よりも、その人がイメージしている内容(過去に失敗している自分の姿を想像し、今度こそはあんな状態になりたくないと思い浮かべている自己イメージ)が優先して、その人を緊張させて失敗させているのです。緊張し、あがったときの自己イメージが頭から離れない限り改善はされません。

 本来自己催眠の目的とは何かを考えたとき、自分の無意識(潜在意識と同じ意昧)に自分で働きかけることで、自分の目的・願望を実現させることにあると考えます。したがって、目的や願望を叶えるためには、白分の無意識に暗示を送り込むことができるように、自分で自分を催眠(トランス)状態に導かなければなりません。そのテクニックは重要です。自分をトランス状態に導くための時間が長くかかっては大変です。自分をトランス状態に導くために、仮に一回三十分かかったとすれば、一日に何回も暗示を無意識に送り込む場合、かなりの時間を失ってしまいます。ですから、いかに早くトランス状態を作り出すかが決め手になります。

 私は、白己催眠を習いに来る人に対し、数秒でトランス状態に導き、自分の無意識の中に働きかけることができるように指導しています。場合によれば、数秒どころか、トランス状態をわざわざ作り出すことなく、無意識に暗示を送り込むことができるように指導し、願望を実現させるテクニックも教えています。

 さらに自己催眠の習得において、自分の心の深層(無意識)との対話ができるようになることも価値あることです。

 人生における課題や苦難を乗り越えなければいけないときは、あなたが真に自己を信じきったときに、あなたの無意識は、必ずあなたを導き枚ってくれます。必ずそうなるのです。あなたはそう信じる力を早く得ることです。