HOME > 本文紹介Ⅳ



 “心の病”にかかる方には、いくつかの生まれつきの性格的特徴があります。また、その特徴が、子供のときの環境で強められることもあります。ですから、誰もが心の病にかに かるわけではありませんが、現代人にとっては心の中に潜む。ある力(トラウマなどの原法因)によって、肉体が原因ではない症状に悩み苦しみだす可能性がかなりあると言ってよいと思います。心の病にかかる人、かからない人が、生まれつき決まっているわけではありませんが、そうなる傾向が強いか弱いかの差はあると言ってよいでしょう。人それぞれで、どのような環境から強く影響を受けてしまうかどうかが決まってきます。

 心の中に潜む“ある力”によってやめようと思いながらも食べ続けてきた。しかし、その食べるという行為が何らかの努力によって遮られたとしましょう。そうなると“ある力”は仕方ないと諦めてしまうものでしょうか。そうであれば助かりますが、そんなに簡単に問題は解決しません。“ある力”は時間を置き、タイミングを見計らって、もっと強い力で攻めてくるか、別のかたちでその人に反撃してきます。別のかたちで反撃してきたときは、ほとんどの人には、その力は、肥満の原因と同じ原因から出ている。“ある力”だとは気づくことができないでしょう。こうなっていくことが怖いのです。人の心の中に抑圧された心の傷やうっ積された感情というものは、自然に解決するものではありません。その傷が深ければ深いほど問題は深刻です。生きている限り影響を受け苦しみ続けます。 

 人はどんどん肥満になっていくとき、これではいけないと悩んで、ストップをかけるものですが、なかなか止められないものです。なぜなら、そのときにその人を包む大きな悩みが背後にあるからなのです。それに気づいてはいるのだけども、その悩みと食べすぎとの関係がよく分かっていない、また背後の大きな問題が、解決しそうにないのでやけ食いになってしまっている。食べることで逃げている。そうしているうちに太っている自分を受け入れようと努力する人、食べたい気持ちを抑えられないので食べるけど食べた後に太らないために吐く癖がついてしまう人(過食症)、食べることを拒絶してしまう人(拒食症)、その他の神経症にかかる人などに大きく分かれてきます。どちらにしてもその背後に現在の大きな悩みがその人を包み込んでいることと、個人的にどのような悩みかは様々だけども、“あること”が現在その人を悩ませていて、その“あること”で解決できないほど悩まなければいけなくなっているのは、その人の幼児期から子供時代の環境に原因があるということに気づいて欲しいと思います。

 ダイエットにおける問題がいかに大きな更なる問題のきっかけになることもあるかということを、もう少しみていきましょう。多くの女性は、中学や高校のときに何らかの理由でダイエットに関心を持ちます(もちろん小学校のときから肥満で問題になっている場合に も多くありますが、これは後に回します)。この思春期の時期に、男の子や友達に注目をご浴びてモテたり好かれたいがために、痩せようと努力し始めたとします。

 しかし、ここに落とし穴が待っています。この落とし穴にはまってしまうと自力では抜けられなくなってしまいます。それは、その子がなぜ痩せようと思ったのかの動機の背景に関わっています。それは、幼少期からこの時期までの家庭環境に問題があります。親は子供にかまわず、子供も親との関係が希薄で親に対する不満や悩みがあった場合や、夫婦喧嘩やいさかいが絶えず家の中での居心地が悪い場合、子供は学校などにおける人とのかかわりで悩むようになります。自分に問題があるので友達とうまくやっていけないとか、自分は人に好かれない人間だと悩むようになっていきます。このように自分を責めるだけです。どのように人とかかわればよいかを教えてくれる人も学ぶ機会もなく苦しみます。両親に自分を理解してもらうこともなく、自分を分かってくれる人がいない孤独な心の中で、自分というものを見失ってしまいます。白分の価値が分からなく自信を持てなくなっています。自分はつまらないから人は自分のことを大事にしてくれない。また、評価し認めてくれることがない。だから自分は生きている価値がないとまで思いこんだりすることで、どんどん食べるようになる。どんどん食べることや不良化し遊ぶことで現実逃避を図る。そうやってごまかしても心はむなしくなるばかりだし、何も満たしてくれないがどうしてよいか分からなくなり、流されていきます。

 一人で悩むケースと仲間の中に入って慰めあうケースがありますが、一つの現実逃避の手段として食べるようになります。しかし、太りたくないので食べた後、人に分からないように吐く過食嘔吐症に陥ることもよくあります。もっと人に好かれるために、注目を浴びるために、どうしたらよいかを考えたとき、内面を見つめることがない心は外見上の世界にのみ目がいくようになってしまいます。もっと痩せて、美しくなり、テレビに出ているアイドルやタレントのようなよいスタイルに少しでも近づけたら、もっと人から注目を浴びることができるはずだと頑張り始める。そこから限度がない拒食症にはまっていく人がいます。状況によっては醜形恐怖症(自分の顔や身体が醜いので人から受け入れられないという思い込み)などの様々な神経症に発展することもあります。

 肥満にしても心の病にしてもある一定線を越えてしまうとそこから引き返すことは容易なものではありません。しかし、そうなってしまったからには、腰を据えて自分を見つめなおし、そうなった原因を直視しながら根本から自分を改善していくことの必要性を考えてください。もう表面的なだましだけでは何の解決にもなりません。また同じような事態が自分を苦しめるだけだということを理解し受け入れていかなくてはなりません。そして現実と根気強く戦う覚悟が必要となります。